「トラスティベル ~ショパンの夢~ ルプリーズ」クリア

「届くかな 彼に… 私のエアーキッス…」

 

冒頭の恥ずかしいポエムは最後の光景であり何度と繰り返されてきた悲劇でもあった。

 

ところで、エンディングまで見ても「ポルカが身投げすることで世界が救われるのは何でなの?」という部分が引っかかってしまったが、これはそのまま「10年前に時間が巻き戻るから(表面的には)救われるね」というなんともひねくれた解釈だった。

そんな歪んだ運命を創造主兼ラスボスのショパンさん自らが「ポルカの人生と、この世界の未来のために」決意する、あの熱のこもった強制介入は迷&名シーン。ここら辺の独白はスタッフロール(ショパンver.)で明かされるので、セミラスボス戦ではぜひビートを外してショパンを入れよう。

 

「ラスボスはショパン」という情報自体は知っていたので、最終的に「世界が創造主の元を離れて確立する」という話になるとは思っていたが実際正しかった、はず。

ポルカショパンさんが花畑で話していた夢と現実の話から「所詮は夢幻の世界」ではなく「これは現実であり、この世界で彼らは確かに生きている」と、旅を通して答えを得るという筋書き自体は好き。もう少しショパンさんと人々の触れ合いを描写した方がよかったと思うし、ストーリーの流れが全体的に平坦な上に国越えの山中でクライマックスになるのも唐突な感じはあるが。

あとカットシーンが長すぎる。MGS4といいSO4といい、映像的にも色々できるようになったこの時代では流行りだったのか。

 

肝心のフレデリック・ショパンの音楽に関しては、ストーリーの幕間に挟まる「ショパン評伝」にて流れるのみ。このショパン評伝は、各章のタイトルと同名のピアノ曲が流れる中、その名曲が生まれた経緯や当時のショパンの状況が解説される、ゲーム本編とは切り離されたドキュメンタリータッチなもの。てっきり劇中でふんだんに使用されると思っていたが、だからこそラストの「革命」が効いてくるのかもしれない。

劇中の音楽はお馴染みの桜庭統さんが担当。幻想的な世界観に合わせていつものロックな曲調は鳴りを潜め、オーケストラメインの作りで通常戦闘すら荘厳なものになっている。

 

背景美術の色使いの鮮やかさ、オブジェクトの細かなデザインが素晴らしく、戦闘システムにも影響する光と影の表現も本当に美しい。木漏れ日や川のせせらぎ、水影の揺らめきなど、森の豊かな自然についつい立ち止まってしまう。お気に入りのスポットはリタルダントの鉱封薬ショップ。

 

しかしそんな癒しの情景も、バトルが始まってしまえばその苛烈な戦闘バランスによって180度反転する。序盤でなすすべなく全滅したときは笑うしかなかった。

戦闘はターン制。といってもフィールドを動き回る形式で、行動には時間制限がある。

順番が回ってくると、まず状況の確認やキャラクターの行動を考えるための「シンキングタイム」が数秒間設けられる。それが終わると実際の行動に移る「アクティブタイム」が開始。制限時間内に移動や攻撃、アイテムの使用を自由に行っていく、という流れになっている。

敵のターンでは、攻撃に対してタイミングよくボタンを押して防御や反撃を行う、いわゆるパリィ的なシステムがある。これがこのゲームで最も重要で、最初は敵の予備動作が分かりやすく対処もしやすいが、通常戦闘からボス戦まで徐々にタイミングがシビアになってくる。防御が失敗すると一気に窮地に陥り、そのまま全滅まで追い込まれることも珍しくない。

特に人型のボスは攻撃の発生が異様に速く、各固有技の緩急(さらにカットインありのパターン違い)と相まって非常にタイミングをずらされやすい。それでいて常に防御前提のバランスで計算されているところが本当に意地が悪い(誉め言葉)。

 

そんな不安要因とも言える防御の機会を減らすには「やられる前にやれ」の鉄則。自然とAtkの高さと遠距離+ヘッドショットで、加入直後から味方の10倍以上のダメージをたたき出す弓のお姉さんビオラが枠を占有する。とはいえ射撃のエイムが難しく「距離を取らないと威力も低い」こともあってバランスは取れてる、のか?実際扱いやすいアレグレットの方が起用頻度は多め。

また行動順に直結して、ボスの連続ターンに割り込んで回復の機会を作りやすくなるSpdの高さも採用の基準になる。後半からはこの数値がぶっちぎりのファルセットが常にスタメン入り。

ということでAtk、Spdのステータス重視でファルセット、アレグレット、ビオラ、ジルバの順で採用が多かった。ジルバはSpdがワースト1位だが、何と言っても特大ガンブレードによる攻撃範囲の広さが強み。あと単純に気持ちいい。

 

それとは別に、パーティの懐事情を担う唯一無二の存在であるのがビート少年。

このゲームは戦闘中にビートの「撮影」で入手した写真をショップで換金することができる。写真屋さん垂涎もののベストショットが提供できればそれだけ資金繰りも楽になり、さらにボスが対象ならプレミアが付くこともあってボス戦の固定枠になっていた。実戦面でも射程無限でエコーを稼ぎやすく優秀。

シビアなゲームバランスの中ではアイテムの大量補充が欠かせず、自然と、この8歳の小さな少年に旅の命運がかかってくる。大人は何やってるんですか。

 

ヒロインのポルカについては、このゲームで最も厳しい寒さを誇るパーティ分断後の時期であっても、安定のビートと必殺技強化のサルサショパンを合わせる、という形が定着して……TORのアニーを思い出さずにはいられない。あっちはボス戦で活躍できるが。

 

戦闘自体はシビアなバランスも含めて面白いが、システムの引き上げになるパーティクラスのレベルはもっと短い間隔で上げても問題なかったと思う。

世界が大きく変わる一段階目の「移動速度1.5倍」を後半あたりに据えると中弛みもなくなって良かったかなと。これも同じくシステムレベルの引き上げが遅いFF13を思い出して少し惜しい。

あと戦闘時のボイスと効果音の音量があまりにデカすぎるのでカットシーンとは別に設定できるとよかった。

 

冒頭のポエムで少し面食らったけど良いRPGだった。当時CMで見かけることの多いゲームだったのもあってなんだか感慨深い。

 

 

クリア後に隠しダンジョンへ。マップが入り組んでる上に2体目のボス戦で負けてやる気がなくなったのでもうおしまい!でもやっぱり悔しいから初めてのお手製マッピング。自分で書くのは面倒だけど案外楽しい。

隠しダンジョン開始でパーティクラスがレベル6になると、世界が変わる二段階目。必殺技6連携が解禁され、ハーモニーチェインからハーモニーチェインに繋ぐことも夢じゃない。ダメージ倍率も超絶インフレ、ここまて来るとプレイヤーの好みでメンバーを選んでも全く問題ない。本気ロンドをアンダンティーノトリオで倒せて満足。

防御偏重の能力を見て本編でほとんど起用機会のなかったマーチちゃん。隠しダンジョンのラスボスにて「飽くまで様子見」で戦ったら一発でストップが入ってタコ殴り、初見で倒せてしまった。すみませんでしたマーチ先輩。