「デメント」クリア

「自分のホラーゲーム耐性を確かめたい」というチャレンジ精神を最序盤でバキバキに折ってくれたゲーム。「サイコブレイク」「サイレントヒル3」をクリアできた今ならと改めて再挑戦。購入からおよそ10年越しのクリアとなった。

舞台は厳かな古城ということもあってか、気味の悪い背景描写や凶悪なクリーチャーといったものは現れない。その代わりに恐怖を演出するのが、主人公フィオナを捕らえようとする「追跡者」の存在である。

城内を動き回るこの追跡者と、シームレスなマップ構造が組み合わさり「いつ、どこから現れるか分からない恐怖」を常に意識させられる。フィオナはごく普通の人間で、このゲームには(特殊な装備品を除いて)武器の類は存在しないため「逃げる」「隠れてやり過ごす」ことに専念しなければならない。

 

そんな本作には「パニック値」という特殊なシステムが存在する。城内の仕掛けや謎の物体との接触、追跡者との遭遇はもちろん、攻撃を受ける、威嚇されるだけでもフィオナの精神的ダメージは蓄積していく。

また、蓄積値に比例して画面の色味は白く、鼓動音は激しくなっていく。プレイヤーの焦燥感をも一気に引き上げてくる、シンプルでありながら非常に良い演出だと感じた。

パニック値が一定量を超えると、フィオナが発狂し勝手に走り出してしまう。プレイヤーの操作が効きづらくなる上にアイテムの使用も不可能に。こうなったら諦めるしかない……と思いきや、常に全力疾走してくれるスプリンター仕様のおかげで、追跡者を撒きやすくなるという利点がある。壁やオブジェクトに激突して仰け反ったり、ランダムで転倒したりと危険な時間には変わりないが、そこは相棒のヒューイの助けもあって案外何とかなる。

 

ヒューイは城内の謎解きから追跡者の足止め、果ては撃退までこなせる頼もしいホワイトシェパード。オス、4歳。

序盤はなかなか指示を聞いてくれなかったり、助けを呼んでも動いてくれなかったりするが、信頼関係を構築できればこちらの意図を汲み取ってくれるし、自発的に動いてもくれる。追跡者を一方的にハメてノックダウンさせることも夢じゃない。

とはいえ、いくら信頼関係があろうと最終的にはヒューイのご機嫌次第。それはそれ。決してヒューイ頼みにはせず、アイテムや逃走経路、隠れられそうなポイントはしっかり確認できればよかったね。

 

追跡者の脅威度としては(オールドロレンツォを除いて)ダニエラが最も低い。ダニエラ編はマップの構造が狭く、自然と遭遇機会が多くなることもあって、最初のデビリタスより撃退しやすいように調整してあるのかもしれない。

その一方で謎解きの部分に関しては一気に難しくなる。これがホラーでなければなんとか自力で進めようと思えただろうが、謎解きに時間がかかる=エンカウントの恐怖につながることが精神をじわじわと締め上げ、無事ギブアップ。攻略情報を解禁してしまった。

 

ホラーゲームを遊べるようにはなったが、苦手なことには変わりない。怖いものは怖い。その怖さをしっかり感じられるいいゲームということで。

 

本作の宣伝文句としても大きく取り上げられているが、カットシーンの演出を俳優である竹中直人さんが担当している。インパクトのある恐怖演出の中で、所々に笑える要素も含まれているのが印象的。リカルドの落下シーンは分かっててやってる。

さらに作中のキャラクターのモデル、モーションアクターまで務めており「ストーカー竹中」「パパ竹中」「オールド竹中」「ミドル竹中」「ヤング竹中」と5パターンもの竹中直人が登場。さながら竹中直人のバーゲンセールである。