「ドラゴンクエストXI S」クリア

マントラヘキサドライブ」なるものをご存じだろうか。

 

それは2005年にアトラスから発売されたRPGDIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー2」の基盤となるシステムの一つである。

このシリーズは馴染み深いレベルアップによるステータスの成長と、スキルの習得が別個のものとして構成されている。

マントラ」と呼ばれるスキルの詰まったプログラムを購入し、戦闘を重ねインストールが完了されることで習得、また上位のプログラムが購入できるように、という流れを繰り返してキャラクターの戦術を拡張していく。

一作目では直線的なフローチャートの方式を取っていたが、二作目では六角形のパネルを集めたハチの巣状に変わっており、習得に伴って隣接する複数のパネルが一気に解放されていく。上位級のスキルだけでなく他系統のスキルも視野に入ってくる。これが「マントラヘキサドライブ」である。

初めは極狭い範囲しか見通せないが、マントラを解放していくことで徐々に外側の世界も明瞭になっていく。パネルの海を自由に渡って版図を広げていくような、そんな感覚も楽しい。(実際は秘言マントラが枷になってくるが)

 

ドラゴンクエストXIとは全く関係ないように見えて、実は本作もこのスキルパネル形式を採用している。ただ勘違いしてはいけないが、ハニカム構造という「形」が同じなだけで習得の過程はアバタール・チューナーと全く異なる。こちらはレベルが上がるごとに獲得するポイントを使ってスキルを習得していく、直列タイプである。

 

ここまでタイトルとはあまり関係のない説明を長々と書いてしまったのは、私にとってアバタール・チューナーが特別だからに他ならない。

どんなゲームで、どんなシステムであろうと、ハニカムスキルパネルが採用されている時点で「あ、マントラヘキサドライブ」と、まるで雛鳥のように反応してしまう、三界輪廻のマントラベイビーなのだ。

 

「いつかやる」の筆頭だった、今も多くの人々に愛される国民的微炭酸RPGドラゴンクエストシリーズの最新作をようやく遊んだ。

 

まずVIIIから始まったスキルシステムは上述の通り。

序盤にある港町の占い師に話しかけないと把握できない上に、その内容も「次に覚えるスキルと必要なポイントだけ」というVIIIの不透明な作りが非常に不満だった自分にとって、マントラヘキサドライブ化による全体の可視化、気軽に振り直しができる快適性も含めて大幅に遊びやすく改善されている。

完全にマントラヘキサドライブ

単純に「どのスキルから取るか」を考えながら攻略していくのが楽しいのはもちろん、小技として(カミュ以外は)振り直しを利用したカテゴリー間の橋渡しができるのもいい。

カミュといえば、一人だけ序盤の時点で外側のパネルが表示されていてワクワクさせられた。最初から覚醒の兆しがあったということなのか、単に自分が他のパネルで確認できてないだけか。)

 

今作では「れんけい」で仲間との協力アクションが発動できる。そう、これまたアバタール・チューナーの「リンケージ」である(開発的にはクロノ・トリガー)。

とはいえ種類が多いからなのか、存在意義の感じられないスキルも多く、また主人公を含まない仲間同士の組み合わせが少ないのも残念だった。

ミナデイン。ド派手な溜めからの……

うーん……(ギガデインと変わらない)

 

スキル回りとも共通するけど今作は「親切さ」が重要視されていて

真面目なシーンでしっかりメタ発言をかましてくれる。

 

集めた素材を消費して装備品を作成する「ふしぎな鍛冶」では、必要な素材が店売りの物なら足りない分を取り寄せてくれる快適通販生活に。

プレイ間隔が空いてしまった人のための「あらすじ」に、ピンク色の吹き出しが表示されるNPC、仲間との会話、マップ表示の右側にまで「次の目的」を提示してくれる。これだけ手厚ければ迷うこともない。

ただ、どんなに悲しい場面でも「次の目的」のことで頭がいっぱいになってしまう会話の優先度については考えてほしかったが。

墓参り後。思いやりのないカミュ

人の心を知らないセーニャ

難易度としては聞いていた通りでかなり易しい。過去のシリーズではレベル上げを要求される箇所が必ずと言っていいほど存在したけど、今回はクリアまで一度もその必要がなかった。

戦闘中のパーティが全滅しても控えメンバーが飛び出してくれるようになったのも大きな変更点。過去作では馬車引率時のみだったので素直に嬉しい。

 

序盤(魔王に支配されるまで)は行き当たりばったりで行動しても何とかなる程度で、初の全滅は中盤であるシルビア編フィールドのサバクくじら。強制戦闘では眠りと魅了で雁字搦めにされたマルティナ。

 

過ぎ去りし時を求めるまでは魔王ウルノーガも含めて詰まることもなくサクサク進める。邪神復活後から各地でサブクエストが一気に追加されて、嬉しい楽しいボスツアーの始まり。そして急激に難易度が上がる。

 

最初に戦ったマーマン軍団がピークではあったけど、敵の攻撃力が一気に引き上げられていて仲間の命が軽い。自然と全滅の頻度も増えてきたことで、ようやく装備の見直しからスキルの振り直しまで真面目に考え始めるように。

それからスキルカテゴリーが追加されたシルビアとグレイグの役割を思い切って変えてみる。回避盾且つレディファーストでトリッキーな動きが面白いシルビア、純粋な盾役として頼もしくなる上にザオリクのおまけまであるグレイグ。

デスエーギル戦のPT。「かばう」からの回避とガードの嵐で笑いが止まらなかった

ネルセン最後の試練。スカラ+におうだちで面白いほど耐え続ける

この序盤中盤終盤の難易度曲線は順当で良いと思う。ドラクエも優しさの時代へ。簡単すぎて物足りない。そんなあなたにしばりプレイ

 

個人的にどうしても合わなかった部分が、過去作からの音楽の流用。直接的な繋がりのある作品からはいいとして、本編の重要なシーンでVIやVIIのBGMを流すのはやめてほしかった。ドラゴンクエスト本流の新作としてきちんと成立しているタイトルなのに、過去作のBGMを「名曲だから」なのか「なんとなく」なのかは分からないけど流用するのは好きじゃない。「浮いてる」ようにも感じて気恥ずかしくなる。

 

その他の残念だったところ

・過去作では可能な「ワンボタンでメニュー解除」ができない

・パネルでボーナスを取ろうが「ぬすむ」の確率が異様に低い(FF9かな?)

・柵が飛び越せたり越せなかったりする

・ヨッチ村関連で仲間会話が一巡するとカミュしか話せなくなるバグ

 

 

ラスボス戦。メドローア→腕破壊→自滅の流れがドラマティック